膣環境ってどうやってチェックすればいいの?仕組みとチェック方法

大鵬薬品工業株式会社から山口明美さんと松本智恵子先生に依頼をし、いただいたコメントを編集して掲載しています。

~膣内環境を整えて、女性たちのお悩みを改善~
「膣ねぇ」こと日本初の膣プランナー山口明美さんと婦人科医師の松本先生が、膣環境のチェックについて語りました。
(写真左)山口さん (写真右)松本先生

INDEX
「生理」で悩んでいる女性はとても多い!
婦人科で膣内の菌のバランスチェックを
まずは自分の膣環境を知ることが大切
健康と美容のためにも、毎日変化する体を乳酸菌でサポート

「生理」で悩んでいる女性はとても多い!

山口
最近だとSNSなどで「生理」についてのお悩みが寄せられることが多いのですが、婦人科ではいかがですか?
松本先生
婦人科でも生理痛の悩みを訴える方は多くなっている印象です。
昔と比べて「生理痛は病院でケアするもの」という意識も高くなっているんだと思います。
以前は「生理は病気じゃないから我慢」「甘えてるのでは?」という風潮がありましたよね。
山口
そうですね。私もエステティシャンとして女の世界にいるので、生理について女性の意識が変わってきているのを感じます。
驚いたのが、ドラッグストアに中学生向けと書かれた生理痛の鎮痛剤が売っていたこと。
今は生理痛になったら我慢せず、気軽に鎮痛剤を使用する方も増えてきましたね。
松本先生
女性でも生理が重い方がいれば全く生理痛がない方など、本当に個人差があります。
だから女性同士でも理解できない部分があるのが難しいところですよね。

お母さんと一緒に来院される中学生や高校生の女の子も多いです。
生理痛が重い方の中には、子宮内膜症など放っておくと症状が重くなったり不妊につながる恐れのある病気が隠れている場合があります*1
生理の度に鎮痛剤を飲んでいるという方は、痛みを抑えるだけでなく原因をきちんとチェックしてほしいなと思います。

婦人科で膣内の菌のバランスチェックを

山口
私は婦人科系疾患の経験もあるため、3ヶ月に1回は婦人科でチェックするようにしています!
なので、SNSでも「もっと気軽に婦人科検診で受診しよう!」と発信しているのですが、婦人科に行くことが怖いという声もまだ多く聞かれますね…。
松本先生
そうですね。婦人科ではどんな診察をされるのかイメージしづらいなどの怖さを感じて受診をためらっている方も多いのが現状です。
最近では、性感染症の検査などを婦人科に受診して検査するのではなく、個人で検査キットを購入してチェックする方も増えていますよ。
山口
そうなんですね。
検査キットの種類は色々ありますが、検査結果の信頼性はいかがでしょうか?
松本先生
一般的な検査キットでもある程度の判断材料にはなると思います。
実際、検査結果を見てから受診されるという方も増えています。受診のきっかけとして使用されるのもアリだとは思うのですが…。
費用が高いですよね。
山口
そう!高いんですよ。高くてもいいから婦人科には行きたくないという方が多いのでしょうね。
松本先生
性感染症の検査については、症状によっては保険が適用されるものもあります。その場合は、市販の検査キットを使用するよりも安価に検査ができます。クリニックでは、自分にはどの検査が必要なのかを医師に相談することもできます。膣内の菌の種類を確認することもできますし、異常があればすぐに治療を開始することができますよ。

まずは自分の膣環境を知ることが大切

松本先生
少し前までは、子宮内は無菌だと考えられていたのですが、膣内・腸内と同じように子宮内フローラ(子宮内細菌叢)というのがあると分かってきました。どういう子宮内フローラを形成しているのかによって、妊娠のしやすさに影響し、またその他の婦人科の病気との関連性もあるのではないかといわれていますね。最近では、不妊治療クリニックなどで子宮内フローラの検査をすることができます。子宮内腔液を採取して、その中に含まれる細菌のDNAを調べることで、どういう細菌がどういうバランスでいるのかを調べることができます。
婦人科で行う保険適用の培養検査では膣内の細菌のチェックをすることができます。子宮内フローラではないですが、乳酸菌が存在しているのか、悪さをするような雑菌はいないかなどを判定することができます。そちらのほうが安価なので、まずは膣分泌物の培養検査から始めてみるのもおすすめです。
山口
割合まではわからないまでも、膣内環境を知ることはいいですね。
松本先生
そうですね。他には、EMMA検査*を受ける方もいます。EMMA検査は、検査費用は約7万円〜と高額ですが、需要は高くなっていますね。
(EMMA検査:子宮内の乳酸菌の種類と割合を測定し、子宮内の環境が受精卵を受け入れるために最適な状況であるかを確認するための検査のこと)
山口
膣内に乳酸菌が存在しないという方もいるんでしょうか?
松本先生
はい、乳酸菌が全く存在しないという方もいますね。
膣内・子宮内の細菌叢は善玉菌・悪玉菌・日和見菌で構成されていますが、善玉菌である乳酸菌が90%以上のバランスになっているのが、健全な状態と言えます。乳酸菌には外からの雑菌の侵入を防ぐバリア機能があるため、乳酸菌の割合が少ないと他の雑菌が増えることで、においやかゆみの原因となったり、妊娠しにくい原因になったりするリスクが高まります。
山口
乳酸菌が減る原因はどんなことが考えられますか?
松本先生
さまざまな要因が考えられますが、体の免疫力が下がっている方、抗生剤を飲んでいる方の他、膣の洗い過ぎ・ウォシュレットの過度な使用、おりものシートやナプキンで膣周りの通気性が悪い状態が続いていること。また、過度なストレスや疲れ、寝不足、更年期や閉経で女性ホルモンが分泌されていないということが要因になっている方もいます。いずれにせよ、複数の要因が影響して、膣内環境が乱れてくるのだと考えられます。

健康と美容のためにも、毎日変化する体を乳酸菌でサポート

山口
膣の自浄作用を高めるには、女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンが分泌されることが重要なんですよね?*2
松本先生
そうなんです。膣だけでなく女性ホルモンは、女性が女性の機能を健全に維持するために欠かせないものですね!
女性ホルモンのバランスが崩れると生理不順を引き起こすことがあります。その他にもエストロゲンの分泌が十分でないと、ほてりや疲れやすさなどの更年期のような症状が出ることもあり、その状態を放置していると将来的に骨粗鬆症になりやすくなる恐れもあります…。
山口
若い女性は過度なダイエットや不規則な生活が習慣になってしまうと、エストロゲンが減って無月経になったりする方もいますよね。
松本先生
はい、女性の体には欠かせないエストロゲンは血液検査でチェックできるので、
膣内環境のチェックと合わせて行うともっと自分の体の状態を知ることができると思います!
山口
女性の体って常に「揺らぎ」の状態なんですね。
松本先生
女性ホルモンのバランスは約一ヶ月ごとの月経周期によって変化しています。このバランスはストレスや寝不足などさまざまな要因により影響を受けてしまいます。なので、病院での検査だけでなく、日常でのセルフチェックもかかせません。
山口
セルフチェックでは何を見れば良いですか?
松本先生
基礎体温を測定したり、精神的・身体的な変化を記録するのもおすすめですが、身近なところでは「おりものの状態」のチェックもおすすめですね!
月経周期によって、性状や粘稠度に変化があるのが正常なのですが、色やニオイなどが普段と違うなというときは、まずは生活習慣・食生活の習慣を見つめ直すタイミングかもしれません。
山口
なるほど。日常でのセルフチェックで日々の変化を感じながら、膣内環境を整える乳酸菌を積極的に上手に取り入れて、自分自身の体調をコントロールしていくことが大切ですね!
〈参考文献〉
*1若林杏樹・山口明美、なんとなくずっと不調なんですが膣ケアで健康になれるって本当ですか?、初版、P152-161、2022年
*2若林杏樹・山口明美、なんとなくずっと不調なんですが膣ケアで健康になれるって本当ですか?、初版、P68-69、2022年
  • 日本初の膣プランナー
    山口 明美(やまぐち あけみ)

    エステティシャンの門を叩き、美容業界歴29年。
    社会人としてのキャリアを積むかたわら、あらゆる婦人科系の不調に悩みました。2人目の出産時には、14針を縫う会陰裂傷を経験し、産後うつや心身の回復に悩まされる日々を過ごしていた時に出会ったのが膣ケアと膣トレです。

    女性が仕事と家庭を両立する中で、必ず起こりうる女性ホルモンの変化による様々な不調や、「知らなかった」という無知による病気の発症や進行、生理痛による苦しみや辛さ、更年期で昇進を諦める悔しさを、自分の身体についての理解を深めることで自身を守り抜いてほしいと思います。

    「なんとなく」を卒業し、一生輝く女性でいるために今一番大切なフェムテックリテラシーを伝える啓発活動として様々な講演やセミナーを企業やSNSで発信しています。

  • 【監修】
    婦人科医師
    松本 智恵子(まつもと ちえこ)

    フィデスレディースクリニック上野院院長
    日本産婦人科学会認定産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。
    滋賀医科大学を卒業後、京都大学医学部婦人学産科学教室に入局後、大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニック上野院院長となる。
    現在は院長として婦人科診療に携わる傍ら、女性医療に関する記事の監修も多数行っている。