おりものの量が多くて不安……病院に行くべき?

おりものとは、子宮や膣からの分泌物が膣外に排出されたもの。下着が汚れ、外陰部の臭いの元となることもあるため煩わしいものに思えるかもしれません。しかし、おりものは膣内を清潔に保ち、受精の手助けを担う大切なものです。

そんなおりものの量・色・臭いなどには個人差があり、自身のおりものが正常か異常かを判断するのは非常に難しいでしょう。しかし、明らかにいつもよりおりものの量が増えると、「何か病気なのでは……?」と不安になるものです。
そこで今回は、おりものの量が増える原因と、病院へ行く目安について詳しく解説します。

◆おりものの量と女性ホルモンの深い関係

おりものの量は日々変化しています。ほとんど気にならないという日もあれば、下着が汚れて大変……という日もあるでしょう。

こうした量の変化は、おりものの分泌量が女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」の影響を受けることで引き起こされます。簡単に言えば、エストロゲンの分泌量が多いほどおりものの量は増え、エストロゲンの分泌量が少ないとおりものの量も少なくなるのです。

◎エストロゲンとおりものの量の関係とは?

女性の身体は、初潮を迎えると閉経までの長い間、ほぼ一定のペースで生理がやってきます。およそ28~35日ほどのこのようなスパンを「性周期」と呼びますが、性周期は女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌バランスによって引き起こされます。

エストロゲンの役割は、子宮内膜の増殖と卵子の成熟、排卵の促進です。生理がはじまるとエストロゲンの分泌量が徐々に増加し、排卵を迎える頃にはピークになります。つまり、排卵前後が、おりものの量がもっとも増える時期と言えるのです。

そして、排卵が生じると、エストロゲンの分泌量が減っていく一方で、子宮内膜の状態を整える働きを持つプロゲステロンの分泌量が増えていきます。このため、排卵後から生理前はおりものの量は少なくなり、ドロッと濁った卵白のような少量のおりものが見られるようになるのが特徴です。

◎年代によっておりものの量は変わる

エストロゲンの分泌量は年代によって変化するため、おりものの量も年齢を重ねるごとに変化していきます。それぞれの年代でのおりものには次のような特徴があるので、見ていきましょう。

●初潮を迎える頃~10代

初潮を迎えてから10代までの性周期はまだまだ不安定です。規則正しく生理が来ないケースも珍しくありません。これは、女性ホルモンを分泌する卵巣の機能が未熟なためです。当然、エストロゲンの分泌量も不安定なため、おりものの量は増えたり減ったりを繰り返します。

●20~30代半ば

性周期がもっとも安定しやすい時期です。妊娠・出産を経験する方も多いでしょう。卵巣の機能は成熟し、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が安定するため、性周期に合わせておりものの変化が見られます。

先ほど説明したように、排卵前はおりものの量が増え、生理前はドロッとしたおりものが見られます。これはホルモン分泌が正常な証拠。心配する必要はありません。

●30代後半~40代

エストロゲンの分泌量は、30代後半頃から徐々に減少していきます。そのため、おりものの量も少しずつ減っていきます。おりものには膣内を清潔に保つ働きがありますので、おりものの量が減ることで膣内の雑菌が異常増殖することも。一方、膣内に炎症が起こることで逆におりものの量が異常に増えたり、悪臭がしたりと病的な変化が生じることも少なくありません。

この時期は閉経へ向けて身体にさまざまな変化が生じます。「更年期」が訪れるのもこの時期です。

●閉経後

女性は50歳前後で閉経を迎えます。この頃にはすでにエストロゲンの分泌量は大幅に減少していますが、さらに数年かけて少しずつ減少。60歳を迎える頃にエストロゲンの分泌はほとんどなくなります。

そのため、おりものの量も激減することに。膣内に雑菌が繁殖しやすくなり、膣内の乾燥による摩擦によって痛みや出血を引き起こすことがあります。

◆おりものの量、どれくらいなら大丈夫?

ここまで説明してきたように、おりものの量は年代によって変化します。また、その日の体調によって変化しやすいのも特徴です。そのため、おりものの量の多さ・少なさを極端に心配する必要はないのです。

とは言うものの、やはりおりものの量が多過ぎると不安になるものです。では、おりものの量が多過ぎると感じるときは、どのようなことを考えればよいのか詳しく見てみましょう。

結論から言うと、おりものの量には個人差があるため、「正常な量」を決めるのは困難です。しかも、おりものは上述した通り、膣内を清潔に保ち、子宮や卵巣への細菌などの侵入を防ぐ大切な役割を担っています。おりものがある程度多いということは、身体を守る働きがしっかり機能していると考えてよいでしょう。

具体的には、おりものシートでカバーできる量であれば問題ないことがほとんどです。しかし、生理用ナプキンでもカバーしきれないような多量のおりものがあるときは要注意。好ましくない生活習慣や病気が背景にある可能性もあります。

また、おりものの量が多いだけでなく、悪臭のあるおりもの、黄色や緑色っぽいおりもの、血液が混ざったようなおりものが出たときは、性感染症や子宮の病気の可能性が高いと考えられます。

しかし、おりものに異常が見られたとしても軽く考えて放っておく方が多いのも事実です。中には命に関わるような病気や将来的に不妊の原因になるような病気が原因のこともあります。気になる症状があるときはできるだけ早く婦人科を受診しましょう。

◆こんなときは生活習慣や病気に注意!

おりものの量には個人差があります。また、年代によって変化していくものです。しかし、あまりにも多量のおりもの、臭いや色にも変化があるおりものには思わぬ原因があることも少なくありません。原因としては次のようなものが考えられます。

◎生活習慣の乱れ

エストロゲンの分泌は非常にデリケート。ちょっとしたストレスや疲れなどで乱れやすいものです。そして、エストロゲンの分泌量が乱れるとおりものの量が増えてしまうことがあります。

また、ストレスや疲れは免疫力を低下させ、膣を清潔に保つための仕組みも脆くなることに……。その結果、膣内で雑菌などが異常増殖し、悪臭のあるおりものが増えることも少なくありません。

◎病気

おりものは膣や子宮、卵管、卵巣など骨盤内の臓器の状態を示すバロメーターでもあります。これらの部位に炎症が起きたり、がんになったりするとおりものの量が増えていきます。とくに多いのはクラミジアや淋病、トリコモナスなどの性感染症。女性は性感染症にかかっても自覚症状が少ないとされていますが、おりものの変化が現れやすいのが特徴です。

病気によるおりものの量の変化が疑われるときは、悪化する前に正しい治療を受けるようにしましょう。