女性の膣内環境に良い働きをする乳酸菌「Rosell-11&52(ローゼル-11&52)」 とは?

人間の体内や皮膚には「常在菌」と呼ばれるさまざまな菌が生息しています。常在菌の多くは私たちの身体に利益をもたらし、病気を引き起こすおそれのある悪玉菌を排除し、感染症を防ぐ役割を果たしています。

女性の膣内にも「ラクトバチルス属」と呼ばれる乳酸菌が存在しています。これらの菌が細菌性膣症や性感染症、尿路感染症などの原因となる病原体の増殖を防ぐことで、私たちの身体を守ってくれているのです。

そんな中、Rosell-11&52※は、経口摂取することで膣内の環境を改善できると期待されている菌です。

※Rosell(ローゼル)-11:ラクトバチルス・ラムノーサス、  Rosell(ローゼル)-52:ラクトバチルス・ヘルベティカス

Rosell-11&52はどのようなメカニズムで膣内環境に働きかけ、私たちの身体にどのような利益をもたらすのでしょうか。ここでは、Rosell-11&52の働きについて詳しく解説します。デリケートゾーンの悩みを持つ方、妊活や不妊治療に取り組んでいる方はぜひご覧ください。

膣ケアは女性にとって欠かせない習慣

いまだに性を「恥ずかしいもの」と捉え、周りの人と性に関する話をオープンにできない風潮がある日本。このことがどんな影響をもたらすのでしょうか。

性の話題や生殖器のケアへの関心が低い日本

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、欧米では70~80%の人が乳がん検診・子宮頸がん検診を受診している一方、日本では40%程度の女性しか受診していないという現状も明らかになっています※。そのため、女性にとって大切な器官である膣のケアについても、「関心がない」「そもそも知らない」という方がほとんどではないでしょうか。

※日本医師会:知っておきたいがん検診
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/data/foreigncountry/

膣内の仕組み

健康な膣内は常在菌によって酸性に保たれており、雑菌の侵入を防ぐ自浄作用が働いています。しかし、生活の乱れやストレス、閉経によってホルモンバランスが崩れると、常在菌の活動の低下とともに自浄作用も低下し、雑菌が侵入して炎症を起こしたり、感染症にかかりやすくなったりします。

こうした膣内のバランスを正常に保つのが「膣ケア」です。規則正しい食生活や質の良い睡眠、適度な運動によって女性ホルモンのバランスを整えるほか、ラクトバチルス属の乳酸菌をサプリメントなどから摂取するのはいかがでしょうか。

膣内環境が乱れるとどうなる?

膣内のバランスが崩れて善玉菌であるラクトバチルス属の菌が減少すると、膣内にさまざまな病原体が侵入・繁殖。その結果、性器カンジダ症や細菌性膣症、尿路感染症などが起こることがあります。

「性器カンジダ症」とは、人間の身体に常在する真菌というカビの一種によって起こる性器の感染症のこと。性器にかゆみや発疹が出る、白っぽく粘度の高いおりものが増加するといった症状が見られます。

「細菌性膣症」は、善玉菌の減少に伴って悪玉菌が膣内で異常に増殖する病気です。細菌性膣症を患う人の約半数が無症状ですが、細菌性膣症にかかっている妊婦は、そうでない妊婦に比べて自然流産のリスクが9.91倍、早産のリスクが2.19倍に上昇するとの報告もあり、注意が必要です。

また、雑菌が子宮頸管を通過して子宮に到達すると、不妊の原因となる子宮内膜炎や卵管炎、骨髄腹膜炎につながるおそれもあります。このように、女性が日頃の健康を維持するためにも、妊娠や出産にかかわるリスクを少しでも低減するためにも、膣を正常な状態に保つケアは欠かすことができません。

経口摂取した乳酸菌による膣内環境正常化の仕組み

「Rosell-11&52をはじめとするラクトバチルス属の乳酸菌の経口摂取が膣ケアにつながる」と聞いて、「口から摂取した菌がどうやって膣内に届くの?」と不思議に思う方も少なくないでしょう。経口摂取した乳酸菌は、どのような仕組みで膣内を正常化してくれるのでしょうか。

乳酸菌が膣内に届く仕組みはいまだ解明されていない

乳酸菌を経口摂取すると膣内粘膜に乳酸菌が定着し、膣内を酸性に傾けることで雑菌の繁殖を防ぐ効果が得られることは、さまざまな研究によって認められています。しかし、どのような経路をたどって膣内へ到達するかは、現在も明らかになっていないのです。 「直腸から肛門、会陰部を通じて膣へ到達する」という報告もありますが、真偽は定かではありません。今後の研究によるメカニズムの解明が待たれます。

膣内環境を正常化する乳酸菌の仕組み

では、膣内に届いたラクトバチルス属の乳酸菌は、どのような仕組みで膣内環境を正常化してくれるのでしょうか。

女性の膣内には「デーデルライン桿菌」という、ラクトバチルス属の乳酸菌を主とする細菌叢(さいきんそう:生きた細菌の集合体)が存在します。この細菌叢は乳酸を分泌し、膣内を酸性に保ってくれる効果があります。雑菌のほとんどは中性~弱アルカリ性を好み、酸性の環境では繁殖することができないため、正常な膣内では雑菌の異常な繁殖を防ぐことができます。これは、腸内における「腸内フローラ」とよく似た働きです。

女性の身体は月経周期に合わせてエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンを分泌しますが、これらのホルモンは腟上皮細胞からグリコーゲン由来の物質を分泌します。これがデーデルライン桿菌の栄養の供給源となることで、膣内での乳酸の生成が助けられています。

「女性ホルモンの正常な分泌がデーデルライン桿菌を増殖させ、腟内の環境の正常化につながっている」。こう考えれば、女性の健康とデーデルライン桿菌が切っても切れない関係にあることがわかるでしょう。実際に、生活の乱れやストレス、閉経によって女性ホルモンの分泌が減ると、栄養源が不足することでデーデルライン桿菌の活動が弱まり、雑菌の繁殖が進んで膣炎などがしばしば見られるようになります。

子宮内の菌が妊娠に影響する?

かつては無菌だと考えられていた子宮内。近年では、膣内の菌が子宮頸管を通して子宮内に移行していることが明らかになりました。また、腸内フローラのように「子宮内フローラ」を構成する菌の割合を調べられる、感度の高い解析技術(子宮内膜マイクロバイオーム検査/EMMA検査)も登場しています。

2015年には、米国ラトガース大学の研究者らが「子宮内の善玉菌が着床時の免疫に影響を与える可能性」を指摘。2016年には、米国スタンフォード大学の研究者らが妊娠成功群と妊娠不成功群で子宮内の善玉菌の量を調べたところ、妊娠不成功群では善玉菌が少ない傾向にあることを発見しました。

その他、スペインの不妊治療クリニックからも「子宮内のラクトバチルス属の乳酸菌が少ないグループでは体外受精による妊娠率が低く、流産率が高い」という調査結果が報告されたり、日本人女性を対象とした子宮内フローラの研究によって「不妊治療を受けている女性では、善玉菌のラクトバチルス属の乳酸菌が少ない傾向がある」ことが明らかになったりと、子宮内フローラの状態と妊娠しにくさの関連が続々と指摘されています。これは一体、どのようなメカニズムによるものなのでしょうか。

受精卵はそもそも母体にとって「異物」。そんな受精卵が着床し、妊娠出産に至る背景には、抗原に対する免疫反応が生じないように許容される「免疫寛容」という働きがあります。

しかし、子宮内にラクトバチルス属の乳酸菌が少ない場合は、子宮内に侵入する菌を排除しようとして子宮内膜での免疫が活性化します。そのため、受精卵の着床まで妨げてしまったり、着床したとしても妊娠の継続が難しくなったりするのではないかという仮説が立てられています。

なお、ラクトバチルス属の乳酸菌の細菌叢は、子宮内と膣内ではほぼ同じということもわかっています。膣内の菌が子宮頸管を通して子宮内に移行していることを考えると、ラクトバチルス属の乳酸菌の摂取によって普段から膣内環境を整えておくことが「妊娠成功のカギ」となる可能性もあるでしょう。

膣内フローラの改善に期待の乳酸菌、Rosell-11とRosell-52とは?

乳酸菌Rosell-11&Rosell-52

ここまで「ラクトバチルス属の乳酸菌」と一括りに説明してきましたが、実際にはその種類は約140種類あり、性質もさまざまです。

ラクトバチルス属には100種類以上の菌がある

たとえば、台湾の伝統的な発酵食品「臭豆腐」を作るときに用いられる自然発酵液に存在する「ラクトバチルス キャピラタス」は、鞭毛を備えた運動性を持つ菌です。この菌がどのような働きを持ち、どのように利用できるかはいまだわかっていません。おそらく、今後の研究で明らかになっていくでしょう。

多種多様な種類があり、それぞれ異なる性質を持つラクトバチルス属の乳酸菌。人間の身体にとって有益な菌から、どのような効果があるのか不明の菌までさまざまなものがあります。その中で「Rosell-11&52」は、女性のデリケートゾーンにとって良い働きをすることが報告されている善玉菌です。

カナダのラレマンド社が発見・開発した乳酸菌「Rosell-11&52」

Rosell-11&52は、プロバイオティクス(健康上有益であると考えられる生きた微生物)の1つ。腸内や膣内細菌叢の自然な構成菌であり、腸および女性の健康に関して有益であるという証拠が示されている菌種です。

Rosell-11&52は、発酵技術では世界的に定評があるカナダのラレマンド社によって独自に発見・開発されました。Rosell-11&52を使用したラレマンド社のサプリメントは世界各国で市販されており、抗生物質療法を受けている成人および妊婦の健康な膣内フローラ維持を手助けすることから、カナダ国内では「帝王切開後、抗生物質を処方されている妊婦の膣内フローラのバランス維持効果がある」との表示がカナダ保健省によって認められています。

また、アメリカの栄養補助食品市場においては「成人(妊娠後期の妊婦を含む)における健康な細菌叢の維持を手助けする」「帝王切開による出産前後に有益菌を膣管に補充する」との記載が認められています。

乳酸菌Rosell-11&52の働き

Rosell-11&52は膣内上皮細胞に定着し、膣内の糖を消費して乳酸を産生します。その乳酸が膣内環境を酸性に保つことで、中性~弱アルカリ性を好む悪玉菌である病原体の感染・増殖を抑制してくれるのです。

Rosell-11には、ある種の糖を分泌し保護粘膜(バイオフィルム)を構築することで、病原体感染のバリア効果を高めるという働きもあります。それによって病原菌の増殖と接着を抑制し、過去に病原細菌に感染することで抗原情報が記憶した「獲得免疫」や、生まれつき持っている免疫である「非特異的免疫」が応答することで、感染を抑制する効果も期待できます。また、腸の調子の悪さや痛みにも有効です。

一方、Rosell-52は、実験によってH2O2(過酸化水素)を産生することが明らかにされました。H2O2には、病原体や望ましくない微生物の増殖を抑制する効果があります。 また、実験によって病原体に対する抗体(IgMや IgG)の活性化を促す作用が見られたほか、子どもの冬季における風邪症状(咳や鼻詰まりなど)の抑制効果の臨床結果も報告されています。さらに、健康な人の日常的なストレスを抑制する効果も臨床試験で明らかにされているなど、私たちの健康維持に非常に効果的な菌であることがわかっています。

まとめ

カナダのラレマンド社が発見・開発した乳酸菌「Rosell-11&52」。摂取することで女性のデリケートゾーンに働きかけ、膣内の環境を酸性に保つことで健全な膣内フローラを形成し、病原体の定着・増殖を抑えてくれるかもしれません。

経口摂取した菌が膣内環境に影響するメカニズムはまだ解明されていませんが、Rosell-11&52を含むサプリメントなどを取り入れることで、膣内環境を健康な状態にキープできます。生活の乱れやストレス、加齢によって女性ホルモンの分泌が減少し、膣内環境が悪化している方、将来の妊娠・出産について考えている方は、健康維持のために乳酸菌Rosell-11&52の摂取を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修:海老根真由美さん
1997年埼玉医科大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター母体胎児部門にて病棟医長を就任。
2013年6月からは、白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開業。 所属:日本産科婦人科学会・日本母性衛生学会・日本周産期・新生児学会・周産期メンタルヘルス研究会