セックス後におりものが変化するのは何かの病気?

おりものの悩みはデリケートな話であるため、量や色、ニオイなどに気になる変化があっても相談しにくいという方は少なくありません。そのうえ、セックスをした後のおりものの悩みとなると、なおさら相談しにくいものでしょう。

実はセックス後のおりものの変化に悩む女性は多く、中には何らかの問題が起こってしまっているケースもあります。おりものは、女性の身体の健康を判断する大切なバロメーターです。もし「いつもとちょっと違うかも」と感じる、おりものの量や色、ニオイなどがあるなら、どんな問題を抱えている可能性があるのかチェックしてみましょう。

今回は、セックス後のおりものの変化の原因や病的な問題の可能性、健康な状態を保つためのポイントなどを詳しくお伝えします。

◆セックス後のおりものの変化

「おりもの」とは子宮や膣から出る分泌物のことです。デリケートな膣内部の粘膜を保護したり、細菌などを排出して子宮内に侵入したりするのを防ぐ役割があります。そのため、セックスによって精液が膣内に入ったり、性行為の刺激でダメージが及んだりすることで、おりものに変化が生じることがあります。

◎おりものがいつもと違う?セックス後の変化とは

「量が増えた」「色がいつもと違う」「いつもよりもニオイがキツイ」など、セックス後のおりものの変化に戸惑う女性は意外と多くいることがわかっています。おりものの量や色、ニオイなどには個人差があり、生理周期や健康状態などによっても日々変わるため、おりものに変化があっても問題のないケースも数多くあります。一方、セックスなどが原因で何らかの問題が生じているケースもあるので注意が必要です。

◎おりものが変化する原因とは

普段は粘液状のおりものが、生理周期の排卵期には水っぽく変わり量も多くなります。これは生理的な変化であり問題ありません。このような症状の2週間前後に生理が始まれば、ほぼ排卵によるものと考えてよいでしょう。一方、性感染症などの病気でもおりものは変化します。これは病的な変化があり、何らかの病気を発症している可能性があります。

また、生理的・病的な変化の他にも、セックスなどが原因となりおりものが変化することがあります。たとえば、コンドームをつけずに挿入して膣内に細菌が増えること、タンポンなどの異物を長時間入れていることによって刺激が生じることで起こります。

◎セックス後のおりもののニオイの原因

セックス後におりもののニオイが気になるという場合には、以下のような原因が考えられます。

男性の精液

コンドームをつけずに膣内射精した場合、膣内に精液が残ります。男性の精液は生臭く感じるニオイがするため、精液がおりものと混ざることでおりものも同じようなニオイになってしまうのです。このような場合には、膣の入口あたりをシャワーできれいに洗い流すようにしましょう。膣に付着した精液が洗い流されることで、ニオイが改善することがあります。

子宮口や膣内のダメージ

膣内が十分にうるおっていない状態での挿入や激しいセックスなどによって、腟内や子宮口が傷ついてしまうことがあります。そのダメージによっておりものの分泌が増え、その結果ニオイを感じるようになる可能性も。子腟内や子宮口の粘膜は非常にデリケートです。無理な挿入や乱暴な行為は避けるようにしましょう。ニオイの変化が続くようであれば、病院でしっかり診てもらうことをおすすめします。

性感染症のサインを見逃さないで

おりものが変化する原因として注意したいのが、「性感染症」です。性感染症とは「性的接触によって感染する病気」であり、自覚症状に乏しいことが多く気づかないまま進行します。病気によっては不妊症などの後遺症が心配されるものもあるため、注意が必要です。また、他の人に性交渉でうつしてしまう可能性もあります。

◎おりものの変化に注意

自覚症状が乏しい性感染症ですが、病気によっては、おりものの量・色・臭いなどが変化することがあります。おりものの状態には個人差があるため、どのような状態になったら病気だという明確な判断は難しいのですが、いつもよりも「量が増えた」「色が変わった」「ニオイが強くなった」といった異変を感じたら早めに受診するとよいでしょう。そのためにも、まずは自分の普段のおりものの状態を正しく把握することが大切です。

◎性感染症の種類

性感染症はセックスをすれば誰にでも起こりえる病気です。病気によって、おりものに表れる症状が異なるため同じような症状がないかチェックしてみましょう。

  特徴 よくある症状
クラミジア
感染症
もっとも多い性感染症です。病院を受診し抗生物質を服用することで治療します。治療せず放置していると子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などを招きます。また、治療後も適切な予防をしないと何度でも感染します。 ほとんど無症状ですが、おりものが増えたり、濃い黄色や緑色、茶色になったりすることがあります。また、かゆみや不正性器出血が見られることもあります。
淋菌感染症 病院を受診し抗生物質および点滴を服用することで治療します。耐性菌が増えているので、放置すると子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎などを起こし、不妊の原因にもなります。治療後に完治したか確認が必要です。 無症状のまま進行することがよくあります。悪臭がしておりものの量が増えたり、おりものが濃い黄色や緑色、茶色になったりすることがあります。
膣カンジダ症 膣内の常在菌であるカンジダ菌が異常に増えることで起こる感染症です。身体の免疫力の抵抗力が弱っていたり、抗生剤を服用したりするケースでも発症します。 おりものの量が増え、黄色いクリーム状または酒カス状になることがあります。また、外陰部がかゆくなったり、激しく痛んだりすることもあります。
トリコモナス症 肉眼では見えないトリコモナスという原虫が、膣内に寄生し炎症を起こす感染症です。膣に錠剤を入れる、または内服薬で治療します。 生臭いニオイがして、おりものが濃い黄色や緑っぽい色になります。おりものに細かい泡が混ざったり、かゆみが生じたりすることもあります。

もし気になる症状があるなら、早めに婦人科に行って検査を受けるようにしましょう。また、性感染症の治療で重要なのは、パートナーと一緒に検査を受け、同時期に治療を行うことです。感染しているパートナーが治療しないと、自分が治療した後もパートナーから再感染してしまいます。パートナーの理解を得ることも性感染症の治療では大切なことなのです。

◎性感染症以外が原因の場合も

おりもの量の増加や色の変化、ニオイなどの症状は、性感染症以外の病気が原因の場合もあります。これらの病気を見逃さないためにも気になる症状があるなら早めに受診しましょう。

おすすめ記事:

セーフティセックスとは?

性感染症は、あなたとパートナーが配慮することで予防できる病気です。性感染症を予防するには「セーフティセックス」の知識をもつことが大切です。

◎セーフティセックスの具体的な対策とは

セーフティセックスとは、性感染症予防に配慮したセックスのことです。セーフティセックスで性感染症を予防するためのいくつかの具体的な対策をお伝えします。

●ポイント1 正しくコンドームを使う

コンドームは正しく装着し、セックスの最初から最後まで使用するようにしましょう。途中で破れたり、外れたりしてしまわないように気をつけましょう。

●ポイント2 セックスの相手は1人にする

お互い感染していない者同士のセックスなら感染することはありません。しかし、複数の人とセックスすると、その分感染する機会も増えます。また、性感染症にかかってしまった場合、誰から感染したのか特定が難しく、治療して治ったとしても再び感染するリスクがあります。

●ポイント3 セックス前後にシャワーを浴びる

性器、皮膚、口の中など、人の身体には性感染症の原因になるさまざまな病原菌が付着しています。セックス前後にシャワーを浴びて、身体を清潔に保ちましょう。

◎万が一、感染してしまったら……

性感染症に万が一感染してしまっても、正しい知識をもって治療すれば完治の可能性は高まります。あまり不安になりすぎず、気になる症状がある場合は早めに病院を受診しましょう。

気になる症状があるなら、早めに病院へ

性感染症はセーフティセックスを心がけることで予防できるので、ぜひ上記ポイントを実践してみてください。また、おりものの量や色、ニオイなどの変化が性感染症に気づくきっかけになることがあります。日頃から自分のおりものの状態を把握しておくとともに、「いつもと違うかも?」と感じたら、早めに受診し検査を受けましょう。

そして、年一回またはパートナーが変わる時には性病検査をしましょう。パートナーと一緒に検診を受けることをおすすめします。


監修:海老根真由美
1997年埼玉医科大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター母体胎児部門にて病棟医長を就任。
2013年6月からは、白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開業。
所属:日本産科婦人科学会・日本母性衛生学会・日本周産期・新生児学会・周産期メンタルヘルス研究会