おりものから臭い……これって病気なの?

「おりもの」とは、膣や子宮から分泌された粘液などが膣を通って体外へ排出されたものです。おりものには膣内を清潔に保ち、細菌などの侵入を食い止める大切な役割があるため、女性が健康でいるために欠かせないものでもあります。

しかし、おりもののトラブルを抱える方は少なくありません。なかでも、おりものの不快な臭いはよくあるトラブルのひとつ。そこで今回は、おりものの臭いについて詳しく解説します。

おりものの正常な臭いって?

おりものは、細菌などの病原体が膣から子宮・卵巣などの大切な臓器に侵入するのを防ぐだけでなく、精子が子宮内へ入りやすくする環境を整える働きも担います。

女性の健康を維持し、妊娠を叶えるためにも欠かせないおりものですが、臭いや色、量には個人差があり、どのようなものを「正常」とするか明確な定義はありません。しかし、おりものがいつもと違う状態だったり、量が多かったりするときは、身体のどこかに異常が起きている可能性もあります。

おりものを「健康バロメーター」として活用するため、ご自身のおりものの状態について、しっかり知りましょう。

「酸っぱい」臭いは健康の証

一般的におりものは、やや酸っぱい臭いがするのが正常とされています。というのも、膣内には身体にとって有益な働きをする細菌がたくさん潜んでおり、その中の「デーデルライン桿菌」と呼ばれる細菌が乳酸を産生するからです。乳酸は膣内の環境を酸性にするため、身体に有害な細菌の侵入をシャットアウトすることができるのです。

乳酸はヨーグルトやチーズなどのようにやや酸っぱい臭いがしますので、おりものからこのような臭いがするということは、デーデルライン桿菌がよく働いてくれている証拠と言えます。

いつもと違う臭いがしても慌てないで!

おりものの臭いはちょっとした原因で変化します。たとえば、生理前後は少量の経血がおりものに混ざるため、やや生臭く感じることがあるかもしれません。しかし、生理前後のおりものからの悪臭は身体の異常によるものではなく、数日経てば元の状態に戻るので安心しましょう。

一方、生理前後でもないのにおりものから明らかな悪臭がするときは要注意! おりものの悪臭は日常生活の好ましくない習慣によって引き起こされることもあります。また、魚が腐ったような鼻をつく強い臭いがするときや、悪臭と同時に色や量にも変化があるときは何かの病気が背景にある可能性もあるのです。

日常生活が原因でおりものが臭くなる?

日常生活の好ましくない習慣によっておりものの臭いがきつくなることもあります。具体的には次のような原因が挙げられますので、思い当たることが多い方は注意しましょう。

ストレス・疲れ

膣内は常在菌によって常に清潔な状態に保たれています。しかし、ストレスや疲れが溜まったときや体調を崩したときなどは免疫力が低下し、その結果常在菌の働きが弱くなって膣内に雑菌が繁殖。嫌な臭いを引き起こすことがあります。

このような事態を防ぐためには、日ごろからストレスや疲れを溜めないよう、規則正しい生活を送ることが大切です。

膣の洗い過ぎ

膣の汚れや臭いが気になり、熱心に洗う方も多いと思います。しかし、膣を洗い過ぎると膣内を清潔に保つために必要な常在菌まで洗い流してしまうことも……。細菌性膣炎やカンジダ膣炎などは膣の洗い過ぎが原因で引き起こされることも少なくないのです。そのため、洗うときはよく泡立てた石鹸を使い、「やさしく撫でるように」を心がけしましょう。

外陰部のムレ

女性の外陰部は非常に蒸れやすい部位です。外陰部は汗の分泌が多く、おりものも排出されるため、通気性の悪い下着や生理用品などを長時間着用しているとあっという間に雑菌が繁殖してしまいます。

臭いを防ぐには、できるだけ通気性のよい下着や衣類を選び、生理用品はこまめに交換するようにしましょう。また、長時間のデスクワークも外陰部のムレの原因になりますので、適度に身体を動かして通気を確保することも重要です。

その臭い、病気のサインかも?

日常生活上の習慣を改善しても強い臭いが続くときは、膣や子宮に何らかの病気が潜んでいる可能性が考えられます。具体的には次のような病気の可能性もありますので、注意しましょう。

細菌性膣炎

膣内の常在菌の働きが弱くなることで、細菌が大量に繁殖してしまう病気です。細菌性膣炎にかかると、おりものから魚が腐ったような臭いし、おりもの自体も水っぽくなります。

この病気は、再発しやすいうえ放っておくと細菌が子宮や卵管、さらには骨盤内全体に広がって炎症を引き起こすことも。早めに婦人科の診療を受けるようにしましょう。

カンジダ膣炎

膣内にカビの一種であるカンジダが異常増殖する病気です。カンジダは多くの方の膣に常在していますが、普段は常在菌の力によって増殖が抑えられています。しかし、風邪や睡眠不足などにより常在菌の力が弱くなると、異常増殖することがあるのです。

発症するとおりものの酸っぱい臭いが強くなります。また、白いカスのようなおりものが大量に出ることや、外陰部の非常に強いかゆみや灼熱感を伴うことも特徴です。

性感染症

クラミジア感染症や淋菌感染症、膣トリコモナスなどは性行為によって感染します。これらの性感染症は、おりものの臭いや状態に影響を与えることがあります。臭いのほかに、「おりものが水っぽくなる」「おりものが泡状になり、黄色や黄緑色になっている」「おりものが黄緑色の膿状になっている」といった異常が見られることも。

性感染症は、放置すると卵管癒着などを引き起こして不妊症の原因になることも少なくないため、とくに注意が必要です。

子宮の病気

膣のさらに奥にある子宮の病気も、おりものの臭いの原因となります。代表的なものは子宮内膜炎や子宮頚管炎などです。子宮頸がんや子宮体がんも出血や膿を生じることがあるため、おりものの臭いの原因となります。

臭いがきつい場合は病院へ

おりものの臭いはちょっとした原因で変化します。今回紹介したような日常生活上の習慣が原因となっているケースも多いですが、非常に強い臭いがあるときや臭いが長引くときは病気の可能性も否定できません。放っておくと重篤な病気を引き起こすこともありますので、婦人科で診察を受けるようにしましょう。