なぜ乳酸菌は身体にいいの?~乳酸菌とは~

「乳酸菌と言えばお腹の状態をよくするもの。でも、最近アレルギーにも乳酸菌、不眠にも乳酸菌って聞くけど、一体乳酸菌って何者なの?」。そう思っている方は多いのではないでしょうか。

確かに最近は、乳酸菌のもつ整腸作用以外の効果がさまざまな分野で注目されており、単なる「乳酸菌」ではなく、「乳酸菌○○」や「○○乳酸菌」といった特殊な乳酸菌を含んだサプリメントが数多く市場に登場してきました。

そこで、この記事では乳酸菌の正体を明らかにし、なぜ身体にいいのか、その効果や働きなどをご紹介します。

乳酸菌ってなに?

まず、以下では乳酸菌とはどんな菌なのか、歴史や生息場所、役割などをまとめてみました。

乳酸菌は昔から地球上に存在している細菌

地球上に生命が誕生したのは約40億年前で、そのとき最初に出現したのは微生物だと考えられています。その微生物はさらに数億年かけて進化し、さまざまな種類の細菌を生み出しました。

その中で乳酸菌が誕生したのは約35億年前。その乳酸菌は、17世紀に腸内細菌としてオランダのレーウェンフックに発見され、19世紀にフランスのパストゥールによって研究が進められることになります。しかし、乳酸菌が健康によいとわかったのは、20世紀初めのことでした。

腸との関係

乳酸菌は、糖類を分解し乳酸を生成する細菌の総称です。ビフィズス菌も乳酸菌の一種で、乳酸のほかに酢酸を生成します。これら生成された乳酸や酢酸は腸内pHを酸性に傾けるため、腸内での腐敗菌の増殖が抑えられ、腸内環境が良好に保たれます。

ちなみにこの乳酸菌は、人や動物の腸だけでなくて身体のいたるところに生息しています。女性の場合、膣内にも存在して膣内環境を整える役割を果たしていることがわかっています。

乳酸菌は善玉菌の代表格

腸の中には、身体によい善玉菌と身体に悪い悪玉菌、どちらでもない中間菌の3種類の腸内細菌が生息しています。その種類は1,000を超え、乳酸菌の数は100~1,000兆に及ぶと言われています。

善玉菌は、悪玉菌が増えるのを防いでくれる頼もしい存在。その善玉菌の代表格が「乳酸菌」や「ビフィズス菌」です。乳酸菌やビフィズス菌は、乳酸や酢酸を作り出し腸内を弱酸性にすることによって、酸性を嫌う悪玉菌の増殖を抑えて腸の状態を整えています。

乳酸菌とビフィズス菌の違い

ビフィズス菌は乳酸菌の一種ですが、働きや性質から両者は別物としてとらえられる場合もあります。

乳酸菌は、糖類を分解して乳酸を生成しますが、ビフィズス菌は乳酸の他に酢酸も生成します。また、乳酸菌は大腸・小腸のほかに口腔内や膣内など身体のいろいろなところにも生息していますが、ビフィズス菌は酸素を嫌うため、酸素のない大腸のみに生息しています。

乳酸菌が注目される理由

近年、乳酸菌の研究はどんどん進んでおり、さまざまな分野で注目を浴びるようになっています。そんな乳酸菌には、どのような効果と働きが期待されるのでしょうか。

乳酸菌の効果と働き

①整腸作用

乳酸菌やビフィズス菌が糖類を分解して生成する乳酸や酢酸といった有機酸が大腸を刺激し、その結果、蠕動(ぜんどう)運動が促がされて便通が整ってきます。

②腸内環境の改善

乳酸や酢酸などの有機酸が腸内のpHを低下させることで、身体に有害な物質を生成する悪玉菌の増殖を抑えるだけでなく、体内に入りこんできたさまざまなウイルスや病原菌が生存しにくくすることで、腸内を病気に感染しにくい環境へ改善します。

③栄養素の吸収促進

乳酸や酢酸によって腸内のpHが低下し弱酸性になることで、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルや鉄分が溶けやすくなり、体内に吸収されやすくなります。

④免疫力の向上

腸粘膜下には免疫細胞が密集しており、乳酸や酢酸が生成されるとそれらの免疫細胞が活性化されます。しかも、乳酸や酢酸以外にビタミンB群も生成されるため、免疫力の向上が期待できます。

⑤アレルギー症状の抑制

アレルゲンが体内に入ってくると、身体はそれに対抗するためにIgEというタンパク質を生成します。これが放出する化学伝達物質が原因で、花粉症などさまざまなアレルギー症状を引き起こします。乳酸菌には、このIgEの増生を減少させる働きがあります。

⑥血圧や血中コレステロールの低下

腸内細菌の善玉菌である乳酸菌には、血管を収縮させて血圧を上げる作用のある「アンジオテンシン」というホルモンの働きを阻止して、血管を拡張させ、血圧を下げる役割があることが指摘されています。また、総コレステロールと悪玉のLDLコレステロールの値を改善する可能性も指摘されています。

⑦中性脂肪や体脂肪の減少

中性脂肪の吸収を抑制することでメタボリックシンドロームの予防や改善が期待される乳酸菌「ラクトバチルス ガセリNLB367」が、2011年に日清食品ホールディングス株式会社によって発見され、次いで2012年には、カルピス株式会社発酵応用研究所が、会社保有の乳酸菌「ラクトバチルス・アミロボラス CP1563株」に、体脂肪を減らす作用があると発表しました。

⑧膣内環境の正常化

腸内と同様、女性の膣内にも「デーデルライン桿菌」と呼ばれる乳酸菌が存在していて、膣内の状態を正常に保つ働きをすることがわかっています。

乳酸菌が不足するとどうなる?

現代人は乳酸菌が不足していると言われていますが、ここではその原因と不足することで健康上どういった影響が生じるのか見ていきましょう。

乳酸菌が不足するわけ

①偏った食生活

腸内細菌の悪玉菌は、動物性たんぱく質を好みます。外食や市販のお弁当ばかり食べていると、動物性たんぱく質中心の食生活に陥ってしまい、腸内では悪玉菌が増えて、乳酸菌などの善玉菌が減ってしまいがちに。

②ストレス

乳酸菌は非常に繊細で、仕事や人間関係など過度なストレスを抱えると減少する傾向にあります。

③運動不足

運動をしなくなると足を使わなくなるので腹筋が弱り、それによって腸の蠕動(ぜんどう)運動も弱まり、便通が悪くなって腸内に便がたまります。すると腸内環境が悪化し、乳酸菌などの善玉菌が減っていきます。

④睡眠不足

睡眠不足は自律神経の乱れと密接にかかわっていることがわかっていますが、この自律神経が乱れると腸内環境にも乱れが生じて、乳酸菌などの善玉菌の減少を引き起こします。

不足することで起こる影響

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が不足すると腸内環境が悪化するため、まず便秘や下痢などのお腹の不調が表れます。場合によっては、腸炎などを引き起こすことも。

腸内環境の悪化が長引くと免疫力が低下し、風邪やインフルエンザ、その他感染症にかかりやすくなります。軽減されていたアレルギー症状がひどくなったり、落ち着いていた血圧が高くなったりすることもあります。

乳酸菌は私たちの食生活にも深くかかわっている

腸内細菌も生きていくためには栄養(エサ)を摂取しなければなりません。悪玉菌のエサは動物性たんぱく質ですが、これに対して乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のエサになるのは食物繊維です。

つまり、乳酸菌などの善玉菌の増減には、私たちの食生活が大きく関与しているということです。

まとめ~積極的に摂取したい乳酸菌~

上述のように、乳酸菌などの善玉菌は食物繊維、中でも水溶性食物繊維を好みます。またオリゴ糖も善玉菌が大好きなエサです。したがって、水溶性食物繊維やオリゴ糖を含んだ食材を毎日の食事に取り入れるのがおすすめです。

◎水溶性食物繊維を多く含む食品

野菜類:キャベツ・大根・ごぼう・にんじん・かぼちゃ・おくら・ブロッコリー・ほうれん草など
豆類:納豆・インゲン豆など
いも類:さといも・キクイモ・こんにゃくなど
海藻:ヒジキ・ワカメ・昆布など
きのこ類
果物:熟したもの

◎オリゴ糖を多く含む食品

野菜類:玉ねぎ・キャベツ・ごぼう・ねぎ・アスパラガス・じゃがいも・にんにく・トウモロコシ
豆類:大豆・きなこ
果物:バナナ
その他:ハチミツ

さらに、乳酸菌が豊富な食品の摂取も重要です。善玉菌のエサとなる食材を摂取する他に、すでに乳酸菌が豊富に含まれた発酵食品を食事に取り入れるとよいでしょう。

◎乳酸菌を含んだ発酵食品

乳製品:ヨーグルト・チーズ・サワークリーム・乳酸菌飲料など
野菜・穀類:納豆・ぬか漬け・たくあん・キムチ・ピクルス・ザワークラウト・メンマ・ザーサイ・パンなど
肉・魚類:生ハム・サラミ・塩辛・ニシン漬け・明太子・くさや・馴れずし・アンチョビなど
調味料:味噌・醤油・酒粕・ナンプラーなど

他にも、乳酸菌やビフィズス菌などが含まれた整腸剤やサプリメントもおすすめです。腸内環境を整える乳酸菌は、一度にたくさん摂ればよいというわけではありません。毎日の食生活で乳酸菌を含む食品を1品は取り入れ、毎日続けることが大切です。

何事も継続は力なり。毎日、継続して摂取するように心がけましょう。

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