膣の病気や症状について知ろう~膣カンジダ症~

女性の膣はムレやすく、排泄物に含まれる雑菌などが繁殖しやすいためトラブルが起こりやすい部位のひとつです。かゆみや痛み、おりものの異常、不快なにおいなどさまざまな症状に悩まされたことがある方も多いのではないでしょうか?

しかし、膣は女性にとってデリケートな部位であるため、トラブルを抱えていたとしても誰にも相談できずに悩んでいる方も少なくありません。

そこで今回は、よく見られる膣の病気のひとつである「膣カンジダ症」について詳しく解説します。

膣カンジダ症ってどんな病気?

膣カンジダ症とは、膣内でカンジダ菌と呼ばれるカビの一種が増殖して炎症を引き起こす病気です。以下では、膣カンジダ症はどのようにして感染するのか、どのような状況にあると感染しやすいのかについて解説します。

膣カンジダ症はどうして発症するの?

カンジダ菌が「カビ」であると言うと驚かれる方も多いと思います。しかし、カンジダ菌は私たちの膣だけでなく、皮膚や口の中に潜んでいる「常在菌」のひとつです。通常であれば、カンジダ菌が何らかの症状を引き起こすことはありません。つまり、私たちの身体と共生した状態となっているのです。

しかし、カンジダ菌は「常在菌」のバランスが崩れると異常増殖することがあります。通常、膣の中には乳酸菌などのいわゆる「善玉菌」と呼ばれる細菌が多く存在し、膣内に炎症を引き起こすカビや雑菌の増殖を抑える役割を担っています。しかし、何らかの原因で善玉菌が少なくなることがあります。そうした場合、カンジダ菌が異常増殖して膣カンジダ症を発症するのです。

誰でも膣カンジダ症を発症する可能性はある!

膣内の常在菌のバランスは体調が悪いときなど些細なきっかけで乱れやすいもの。このため、膣カンジダ症は女性であれば誰もが発症する可能性を持つのです。

膣の病気に関して、「自分とは無縁」と思っている方も多いでしょう。しかし、膣カンジダ症は膣の中に元々いるカンジダ菌が増殖してしまう病気であるため、完全に発症を防ぐことは難しく、誰にでも発症する可能性があるのです。また、一度完治しても、膣内のカンジダ菌はいなくなるわけではありません。このように、小さなきっかけで再発を繰り返しやすいのも膣カンジダ症の特徴のひとつと言ってよいでしょう。

この症状が出たら要注意!

膣カンジダ症は、増殖したカンジダ菌によって膣に炎症が引き起こされる病気です。次のような症状が見られるときは膣カンジダ症を発症している可能性がありますので注意しましょう。

膣カンジダ症の特徴的な症状

膣カンジダ症の症状は特徴的で、「非常に強いかゆみ」と「白くぽろぽろとしたおりもの」が見られるようになります。

とくにかゆみは我慢できないほどひどいことが多く、発症したことがある方はよく「灼熱感のあるかゆみ」や「ヒリヒリと刺激されるようなかゆみ」と表現します。じっと座ったり立ったりしていることすらつらいかゆみが起こることもあり、日常生活に支障を来すことも少なくありません。また、あまりに強いかゆみに耐えかねて掻きむしってしまうと、デリケートな膣や外陰部の粘膜がダメージを受けて別の病気を引き起こすことも……。

一方、白いポロポロのおりものは「カッテージチーズ」や「酒かす」、「ヨーグルト」などと表現されることが多いもの。通常のおりものは無色~乳白色の粘液であるため、膣カンジダ症を発症すると明らかに普段とは違うおりものが現れます。

しかし、おりものの変化は人によって現れ方が異なるので、一概に「おりものがこんな状態になったら100%膣カンジダ症!」と言い切ることができません。ひどくなると湯葉のような塊や、緑っぽいおりものが出たるようになる方もいれば、進行してもこのような異常なおりものが見られない方もいるのです。

知っておきたい、膣カンジダ症のその他の症状

膣カンジダ症は、そのほかにも排尿時や性交時にヒリヒリとした痛みが起きやすいとされています。これは増殖したカンジダ菌が膣や外陰部の粘膜に炎症を引き起こすことが原因です。

また、膣カンジダ症を発症すると膣や外陰部の炎症によって、粘膜が赤く腫れぼったくなったり、熱感を伴ったりすることもあります。「歩くと膣の中が擦れるような感覚がある」「外陰部全体に違和感がある」といった症状は膣カンジダ症のサインかも知れませんので注意しましょう。

知っておきたい膣カンジダの原因

先にも述べた通り、膣カンジダ症は膣内のカンジダ菌が異常増殖することによって発症する病気です。本来、カンジダ菌は健康な方でも膣内に常在しているもの。そのカンジダ菌が異常増殖する原因は、膣内の常在菌のバランスが乱れることです。

「常在菌のバランス」はなぜ大事?

膣の中にはデーデルライン桿菌と呼ばれる乳酸菌の一種が大量に存在します。このデーデルライン桿菌は膣の細胞に含まれるグリコーゲンと呼ばれる糖分を分解して増殖しており、その過程で産生される乳酸によって膣内は常に酸性(pH4~5)にキープされています。そして、膣に炎症を起こしうる様々な雑菌やカンジダ菌が増殖しにくい環境を整えているのです。

デーデルライン桿菌の数を正常に保つには、規則正しい生活を送り、膣内環境を整えることが重要と言えます。しかし、仕事でストレスが溜まったり、睡眠時間を十分に取れなかったりすると、膣内のデーデルライン桿菌が少なくなることに。その結果雑菌やカンジダ菌の増殖が抑えられなくなって膣カンジダ症へ進行してしまいます。

デーデルライン桿菌が減ってしまうのはなぜ?

膣内に常在するデーデルライン桿菌は数が多いため、普段は雑菌やカンジダ菌の増殖を抑える力を発揮していますが、実はとても弱い細菌でもあります。そのため、次のようなことがきっかけで数が減ってしまうことも少なくありません。

①抗生剤の使用

原因としてもっとも多いのは、抗生剤の使用によるものです。抗生剤とは、特定の細菌を退治して身体を守るための薬で、感染症の時などに用いられます。もちろん、感染症の治療には必要なものですが、抗生剤が膣内のデーデルライン桿菌に作用してしまうこともあります。そうなると、膣内のデーデルライン桿菌が死滅し、カビであるカンジダ菌が抗生剤の作用を受けず一気に増殖してしまうのです。

②免疫力の低下

デーデルライン桿菌の力は免疫力が低下すると弱まる傾向があります。このため、妊娠中の方や糖尿病を患っている方など、免疫力が低下しがちな方は膣カンジダ症を発症しやすくなります。さらに、健康な方でもストレスや疲れが溜まったり、体調不良などによって免疫力が低下したりすると膣カンジダ症を発症しやすくなるとされています。

③ホルモンバランスの乱れ

デーデルライン桿菌の数は女性ホルモンバランスにも左右されます。プロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンの一種はデーデルライン桿菌の餌である膣内のグリコーゲンを減少させる働きがあります。その結果、デーデルライン桿菌が正常に増殖できず減少することに……。生理前はプロゲステロンの分泌量が増えるため、膣カンジダ症を発症しやすい時期と言われています。

④性感染症

膣カンジダ症はクラミジアなどの性感染症が原因のこともあります。というのも、強い感染力を持つ性感染症の病原体が膣内に侵入すると、デーデルライン桿菌が破壊されカンジダ菌が増殖しやすくなるからです。

⑤外陰部や膣の環境悪化

カンジダ菌は湿度と温度が高い環境で増殖しやすいカビです。ムレやすい膣内はカンジダ菌の増殖にとって最適な環境と言ってよいでしょう。このため、夏場など膣内がムレやすい時期などは膣カンジダ症を発症しやすくなります。

また、膣内の汚れが気になるからと言って石鹸で過剰に洗い過ぎるとデーデルライン桿菌も一緒に洗い流されてしまいます。かえってカンジダ菌が増殖しやすい環境になってしまうこともあるので、注意が必要です。

膣カンジダ症は自然に治るの?

膣カンジダ症は症状がごく軽いものであれば自然に治る可能性はあります。しかし、膣カンジダ症と似たような症状は性感染症などでも生じることがありますので、軽く考えずに医師の診断と治療を受けることが大切です。とくに「大量のおりものが出る」「我慢できないような強いかゆみがある」というときはできるだけ早く病院を受診しましょう。

また、膣カンジダ症の原因は日常生活での好ましくない習慣によって引き起こされることもあります。そのため、発症や再発を予防するためには次の点に注意しましょう。

  • 下着や衣類は通気性のよいゆったりしたものを選ぶ
  • ストッキングやスキニージーンズのような通気性の悪い衣類の長時間着用は避ける
  • 濡れたり湿ったりした下着や衣類は早めに着替える
  • 生理用ナプキンやタンポンはこまめに取り換える
  • 入浴や水泳の後はデリケートゾーンをしっかり乾かす
  • 外陰部はよく泡立てた専用石鹸で軽く洗う