身体を内側からいたわる「膣ケア」をはじめよう

年齢を重ねると、多くの人はお肌や髪の毛の老化について思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、私たちの身体は年齢を重ねるごとに、お肌や髪の毛だけでなく全身のさまざまな部位が衰えていきます。

その中でも「膣」の老化は外陰部の痛みや出血などさまざまな不快症状を引き起こすものとして知られています。 老化は誰にでも平等に訪れるものですが、少しでも不快な症状を軽減するためには日ごろから対策を行うことが大切です。

そこで今回は、「膣」の老化や衰えを予防するための「膣ケア」について詳しく解説します。具体的な膣ケア方法もご紹介しますので、快適な毎日を送るためにぜひ参考になさってください!

「膣の老化」で何が起こる?

お肌や髪の毛の「老化」は気になっても、膣の老化についてはそれほど関心がないという方も多いのではないでしょうか? しかし、膣は年齢を重ねるごとに確実に老化していくもの。お肌や髪の毛と同じく、アンチエイジングケアが必要な部位なのです。

では、「膣の老化」ではどのようなことが起こるのでしょうか? 以下で事例を見ていきましょう。

閉経とともに分泌液が減少 膣の乾燥を招く

膣の内部はデリケートな粘膜でできています。膣は出産時には産道となって赤ちゃんの頭が通るほど広がりますが、普段はギュッと縮まった状態となっているもの。立ったり座ったりといった動作を繰り返すだけでも摩擦が起こりやすいのです。

そんな膣の中では粘性のある分泌液が盛んに産生されています。これにより、膣の粘膜は潤いが保たれているのです。膣の粘膜が摩擦を起こさず健康な状態をキープできているのは、この分泌液のおかげと言えます。さらに、膣の分泌液には細菌が膣内に侵入するのを防ぐ働きもあり、膣内を清潔に保つ「自浄作用」を担っているのです。

この膣分泌液の産生を促すのは女性ホルモンの一種であるエストロゲンです。エストロゲンは生理後から排卵までの期間に多く分泌され、子宮内膜の増殖や卵子の成熟を促す作用がありますが、同時に膣に潤いを与え、清潔な状態をキープする作用もあるのです。

しかし、エストロゲンの分泌量は40代後半頃から閉経に向けて急激に減少。 閉経後年齢を重ねるごとにさらに減少していきます。このため、更年期に差し掛かると膣は分泌液が減少してしまうのです。潤いをなくした膣は、自浄作用も低下することに……。これが原因で、外陰部や膣の痛み、かゆみ、出血、性交痛、おりものの悪臭、下腹部痛など様々な症状を引き起こします。

骨盤底筋の低下で膣に“ゆるみ”が発生

膣の内部は粘膜でできていますが、膣を支えるのは「骨盤底筋」と呼ばれる筋肉の集まりです。骨盤底筋による筋力によって膣は適度な「締め付け」を維持することができるのです。

しかし、加齢によって筋力は徐々に低下してしまいます。骨盤底筋も例外ではありません。とくに現代人の生活は、和式トイレでしゃがんだり、床を雑巾がけしたりといった骨盤底筋を鍛える動作や運動の機会が減っています。このため、骨盤底筋の筋力は年齢を重ねるごとにどんどん低下していきます。とくに出産を経験した女性は妊娠時に骨盤底筋に過剰な負担がかかることで筋力が低下しがちになるとされています。

骨盤底筋がゆるむことで尿漏れを引き起こすことも多く、日常生活に支障を来すケースもあります。中には子宮脱や直腸脱など手術が必要な病気を引き起こすケースに発展することも。

そうした事態を防ぐため、意識的に骨盤底筋を鍛え膣ケアを行うことが、膣の老化を防ぐために重要と言えます。

膣の乾燥によるトラブルをケアする

ここまで解説してきたように、年齢を重ねると膣には乾燥やゆるみといったさまざまなトラブルが見られるようになります。加齢は誰にでも平等に訪れるもの。膣の老化によるトラブルを完全に防ぎ、改善することはできませんが、少しでも症状が軽減するよう日頃から対策をしていくことが大切です。

そのために、まずは「内側」からの膣ケアをはじめましょう。先にも述べたように膣は老化するとエストロゲンの分泌量が低下することによって乾燥します。乾燥によって膣の粘膜がダメージを受けやすくなって痛みや出血などの症状が引き起こされることに。さらに自浄作用が低下することによって炎症を起こしやすくなるのです。

このような症状を改善するには、婦人科医への相談をおすすめします。また、自浄作用を少しでも取り戻すには、膣内の悪玉菌の増殖を抑えるデーデルライン桿菌の数を増やすことがポイント。デーデルライン桿菌とは乳酸菌の一種で、いわゆる「善玉菌」と呼ばれるものです。膣内にあるデーデルライン桿菌の数を正常に保つことで、膣内環境の乱れを防ぎ、膣カンジダなどの発症を防ぐことが期待できます。

デーデルライン桿菌の数を保つためにも、「内側」からのケアが有効です。身体の内側から働きかけ、膣内環境の正常化を目指しましょう。

なお、膣は老化すると細菌が増殖しやすくなるため、おりものの匂いが気になる方も多くなります。そのため、「膣の中を清潔にしよう……」と思い外陰部や膣内を必要以上に洗う方もいますが、これは逆効果です。なぜなら、過剰な洗浄によってデーデルライン桿菌も一緒に洗い流してしまうから。外陰部や膣はよく泡立てた石鹸をなじませてそっとやさしく汚れを落とすように洗いましょう。

骨盤底筋を鍛える「膣トレ」で“ゆるみ”を改善しよう

膣の「内側」のケア方法について知ったら、次は「外側」のケアについても見ていきましょう。ここでは、膣の「ゆるみ」を改善するためのケアを紹介します。

膣のゆるみは骨盤底筋の衰えによって引き起こされるもの。当然、膣のゆるみを改善するには骨盤底筋を鍛えることが大切です。

そのためには、膣周囲の骨盤底筋を動かして膣を「締める」「ゆるめる」を繰り返す「膣トレ」が効果的です。膣トレにはさまざまな方法がありますが、まずは手軽にできる次の方法にトライしてみましょう。

①仰向けに寝て膝を立て、両ひざの間を握りこぶしひとつ分開ける

②尿道や膣、肛門を身体の中に吸い上げるようなイメージでゆっくり力を入れながら「締める」動作を行う

③「締める」動作のまま5~10秒キープし、ゆっくり息を吸いながら尿道、膣、肛門を「ゆるめる」

④この動作を10回ほど繰り返す

なお、この膣トレは立ったり、座ったりした姿勢でも行うことができます。しかし、慣れないうちは身体に余計な力が入って骨盤底筋に力が集中できなくなってしまうこともあります。そのため、膣トレを開始したばかりの方は、横になった状態で行うのがおすすめです。

「膣萎縮」の予防にもなる膣ケアとは?

更年期を迎え女性ホルモンの分泌が低下し、膣粘膜からの分泌物が減少すると、「膣萎縮」を引き起こすケースもあります。膣の乾燥による粘膜の萎縮は、身体の外側からアプローチすることも大切です。定期的に膣を刺激してあげることで膣の乾燥を防ぎましょう。

加齢による膣の乾燥が進み、そのままにしておくと性交痛が生じるようになることも。これにより、セックスレスに陥ってしまうケースが非常に多くなります。しかし、膣は刺激を受けない期間が続くほど機能が衰えて分泌液の産生も低下していくと考えられています。このため、膣の乾燥に悩まされる以前に定期的な性生活があった方は、市販の膣潤滑液などを用いて無理のない範囲で性生活を維持するようにしましょう。

また、性生活がない方もお風呂上りなどに専用のオイルでデリケートゾーンをマッサージするのがおすすめです。マッサージをすることで膣に刺激が加わるだけでなく、膣内の血行が良くなって分泌液の産生がアップする効果も期待できます。マッサージは一回2~3分、毎日行うのが理想的です。しかし、2~3日おきでも十分効果が見られますので試してみましょう。