更年期の膣ケアはどうする? 萎縮性膣炎について

女性ホルモンの分泌バランスが大きく崩れる更年期は、全身にさまざまな体調の変化が現れやすくなります。中には、日常生活に支障を来すような辛い症状に悩まされている方も少なくありません。

そんな更年期の症状のひとつに「萎縮性膣炎」があります。女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が低下することで膣分泌液が減少し、膣内の粘膜に炎症が引き起こされるこの病気。外陰部と膣の痛みや違和感などさまざまな症状が現れますが、デリケートな部分のトラブルであるため一人で悩みを抱える方も多いでしょう。

そこで今回は、萎縮性膣炎の特徴と対処法について詳しく解説します。

◆その症状、萎縮性膣炎かも?

萎縮性膣炎とは、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が低下することによって引き起こされる病気です。エストロゲンには子宮内膜を増殖させたり、卵子の成熟を促したりする働きがありますが、同時に膣分泌液の産生を促す作用もあります。これによって膣内は潤い、粘膜が丈夫に保たれるのです。また、膣分泌液は細菌の侵入を防ぎ、膣内を清潔に保つ働きもあります。

このため、エストロゲンが低下すると、膣の中が乾燥して粘膜が薄くなったり、細菌が侵入して炎症を引き起こしたりするように……。これが萎縮性膣炎の正体です。

更年期は閉経に向けて徐々にエストロゲンが減少していくため、萎縮性膣炎を発症しやすくなります。また、閉経後はさらにエストロゲンの分泌が減少。萎縮性膣炎に悩まされる方もどんどん増えていくのです。萎縮性膣炎は、高齢の女性に発症しやすいことから、かつては「老人性膣炎」と呼ばれていました。しかし、この病気はエストロゲンが低下することによって発症する病気。若い方でもホルモンバランスが乱れていると発症するケースがあるので、注意が必要です。

では、萎縮性膣炎を発症するとどのような症状が引き起こされるのか見てみましょう。萎縮性膣炎では膣の中が乾燥しているため、膣内の粘膜同士が擦れあってヒリヒリとした痛みや出血、かゆみが生じるようになります。また、性交痛もひどくなるため、セックスレスに陥るカップルも多いとのことです。

さらに、萎縮性膣炎は膣内に細菌が侵入・増殖しやすい状態となるため、細菌性膣炎を併発し、おりものの悪臭や色の変化、下腹部痛などが生じることも少なくありません。そして、膣内や外陰部で雑菌が増殖することが原因で尿道を通して膀胱にも細菌感染が生じ、膀胱炎を発症することも……。頻尿や排尿痛など膀胱炎に特徴的な症状も萎縮性膣炎のサインかもしれません。このような症状を感じたら決して放置せず、早めに婦人科を受診するなどしましょう。

◆萎縮性膣炎はなぜ起きるの?

萎縮性膣炎はエストロゲンの低下によって膣分泌液が減少することで引き起こされる病気です。

エストロゲンは女性ホルモンの一種ですが、子宮内膜の増殖や卵子の成熟を促す作用があり、妊娠するために欠かせないホルモンです。また、エストロゲンは膣内の粘液産生を促し、粘膜に潤いを与え、細菌の侵入から膣や子宮、卵巣などを守る自浄作用を担います。

このエストロゲンは、思春期になると分泌量が増加し、毎月、生理後から排卵前に多く分泌されるようになります。一方、40代後半になると来るべき閉経に向けて女性ホルモンの分泌量は徐々に減少。それによって全身にさまざまな影響が生じますが、この時期のことを一般的に「更年期」と呼びます。更年期に差しかかるとエストロゲンが減少していくため、萎縮性膣炎を発症する方が徐々に増えていきます。

そして閉経を迎え、エストロゲンがさらに減少。その後は年を重ねるごとにどんどん減少していきます。このため、萎縮性膣炎は閉経から数年後以降の方に発症するケースが多くみられます。

しかし、萎縮性膣炎は更年期の方や閉経後の方のみに起こるわけではありません。若い方でも病気で卵巣を摘出したケースや、長期間の授乳によって生理がストップしているケースなどではエストロゲンの分泌量が低下して萎縮性膣炎を発症することがあります。

◆ 萎縮性膣炎への対処法

萎縮性膣炎の多くは、年齢を重ねることによる生理的な変化によって起きるものであり、病気自体を根本的に治すことはできません。そのため、ある程度は症状とうまく付き合っていく必要があります。しかし、外陰部や膣の痛み、出血などの症状が強い場合や細菌性膣炎を併発しているような萎縮性膣炎は治療が必要となることも少なくありません。

◎医療機関での治療

今回ご紹介したような症状に悩まされたら、まずは婦人科を受診しましょう。婦人科ではおもに「ホルモン補充療法(HRT)」と呼ばれる治療が行われます。これは、失われたエストロゲンを人工的に補充する治療のことです。エストロゲンと同様の働きを持つ成分を含む飲み薬や膣錠(膣の中に直接挿入する薬)を使用します。これらの治療を行うことによって膣内には潤いが戻り、清潔な状態に戻すことができるのです。

また、細菌性膣炎を併発しているようなケースでは膣の奥まで洗い流して消毒を行う「膣洗浄」や抗生剤を含んだ膣錠による治療を同時に行います。

◎日常生活での注意点

萎縮性膣炎による症状は医療機関での治療を続けても病気自体を根本的に治すことはできません。薬を使用することによって症状を改善することはできますが、悪化させないよう日常生活の上でも注意しなければならないことがあります。萎縮性膣炎に悩んでいる方は次のようなことを心がけましょう。

①膣や外陰部を洗い過ぎない

萎縮性膣炎の方は膣内や外陰部で細菌が繁殖しやすくなるため、おりものの不快なにおいが気になりがちになります。そのため、石鹸で何度もこするように洗ったり、シャワーを長く当てたりして清潔にしようとする方も少なくないでしょう。

しかし、膣内にはデーデルライン桿菌と呼ばれる乳酸菌の一種が存在しており、膣に炎症を引き起こす可能性のある細菌やカンジダなどの増殖を抑える役割を担っています。石鹸やシャワーで必要以上に外陰部や膣を洗ってしまうと、いわゆる「善玉菌」であるデーデルライン桿菌も洗い流してしまうことに……。結果として、さらに細菌が増殖し、炎症が悪化しやすくなるのです。

膣内環境を正常に保つ為には、栄養バランスの取れた食事を心がけることや十分な睡眠時間を取るなど規則正しい生活を送ることが重要です。

②ムレを防ぐ

女性の外陰部や膣はムレやすい部位です。萎縮性膣炎による膣の痛みや違和感は膣の粘膜が乾燥することが根本的な原因であるため、「ムレて潤いが出るのはよいことなのでは……?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、膣がムレると細菌やカンジダなども増殖しやすくなるため、萎縮性膣炎の方は注意しましょう。

膣や外陰部の過度なムレを防ぐには、通気性のよい下着や衣類を選び、とくに夏場など汗をかきやすい時期はストッキングやスキニージーンズなど身体にフィットした衣類の長時間着用は控えることが大切です。また、おりものシートなどを使用している方はこまめに取り換えることも忘れてはなりません。

③膣潤滑剤を活用する

膣の乾燥による性交痛がひどい方は性行為に抵抗を感じ、セックスレスになってしまうケースが非常に多いとされています。しかし、性生活はカップルの重要なコミュニケーションのひとつ。円満な性生活を送るためには、市販されている膣潤滑剤を活用するのがおすすめです。痛みがあるときはパートナーに打ち明けて、それぞれのペースに合わせた性生活を送りましょう。

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